大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)590号 判決 1978年5月24日

控訴人

橘清

参加人

橘昭子

右両名訴訟代理人

中嶋輝夫

被控訴人

兼平末男

右訴訟代理人

巽貞男

主文

原判決を取消す。

別紙目録一の土地(以下「甲地」という。)と同二の土地(以下「乙地」という)の境界を別紙図面のP3点とE点を結ぶ直線と確定する。

原審における訴訟費用は控訴人の負担とし、当審における訴訟費用は控訴人および参加人の負担とする。

事実

第一  申立

一、控訴人および参加人

原判決を取消す。

甲地と乙地の境界を別紙図面R2点とX点を結ぶ直線と確定する。

訴訟費用は、第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

二、被控訴人

本件控訴を棄却する。

(第一次的申立)主文第二項同旨。

(第二次的申立)甲地と乙地の境界を別紙図面のH2点とE点を結ぶ直線と確定する。

訴訟費用は、第一、第二審とも控訴人および参加人の負担とする。

第二  主張

一、控訴人および参加人の請求原因

1  控訴人および参加人共有の甲地と被控訴人所有の乙地は隣接している。

2  右両地の境界には争いがある。

3  右の境界は別紙図面R2点およびX点を結ぶ直線であるので、その旨の境界確定を求める。

二、被控訴人の主張

1  請求原因1、2は認める。

2  両地の境界は別紙図面P3点とE点を結ぶ直線であり、かりにしからずとするも同図面H2点とE点を結ぶ直線である。

第三  証拠<略>

理由

一本訴の適否について判断する。記録によれば、(1)控訴人は、昭和四九年二月一二日被控訴人を相手として、阿倍野簡易裁判所に訴を提起し、控訴人は甲地を参加人として共有しているところ、本件係争境界附近の一群の土地は甲地に属すると主張して右一群の土地が控訴人の所有であることの確認を求めたものであること、(2)同年三月一八日第一回口頭弁論期日が開かれたが、同年五月二七日の第四回口頭弁論期日において、右事件が大阪地方裁判所に移送されて、同年八月一日の第五回口頭弁論期日から大阪地方裁判所において審理され、以後双方からそれぞれの主張が重ねられ、相当の書証が調べられたほか、証人尋問、双方本人尋問、本件関係土地の測量をする鑑定が施行されたが、控訴人が右訴を境界確定訴訟に交換的に変更する旨を記載した昭和五二年二月二二日付準備書面が陳述された同月二三日の第一七回口頭弁論期日において口頭弁論が終結され、同年三月三〇日共有者の一人が提起した境界確定訴訟が不適法であるとして控訴人の訴を却下する旨の原判決が言渡されたこと、(3)そこで、控訴人は同年四月八日当審へ控訴を提起し、同日参加人が右訴訟に共同訴訟参加を申し立てて控訴人および参加人とも事実摘示第一、一のとおりの判決を求めて、当審により実体判断を求め、また、被控訴人も、右第一、二のとおりの判決を求めていて(なお、被控訴人は控訴棄却の申立をしているが、弁論の全趣旨によると、当審による実体判断を求めていることが明らかである。)、双方ともに、当審による実体判断の資料とするための証拠調を求めたことが認められる。

思うに、共有地についての境界確定の訴は共有者全員が共同してのみ訴えまたは訴えられるべき固有必要的共同訴訟であるから、共有者の一部が提起した境界確定訴訟は不適法であるが、残余の共有者が口頭弁論終結の時までに右訴訟に共同訴訟参加すれば、右訴訟の欠缺は補正されるものと解すべきである。もつとも、この欠缺を理由として訴を却下した一審判決に対する控訴審に対する控訴審において右の方法による欠缺の補正が許されるかについては問題があるが、すくなくとも、本件のように、一審において相当の審理がつくされており、被告である被控訴人が同意していると認められる場合には、欠缺の補正を認めるのが訴訟経済の要請に合致するゆえんであり、これを認めても被控訴人の審級の利益を侵害するおそれがないばかりでなく、これを認めるのが被控訴人を含めた関係当事者の意向にそうものといえるから、欠缺の補正を肯認し、事件を一審に差戻すことなく当審の実体判断を示すのが相当である。

《以下、省略》

(朝田孝 富田善哉 川口富男)

目録、図面<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例